寄り道できない電子辞書
行政書士の光岡和隆です。兼職で教員採用試験を受ける学生諸君に英語を教えています。ちょっと考えさせられることがあります。それは電子辞書のことです。
高校や大学への入学祝いで電子辞書を買ってもらうことはよくあるようです。英和のジーニアスに福武の和英が入って、三省堂の新明解国語辞典もベネッセの古語辞典も、果ては英英辞典や類語辞典まで入って、しかもポケットサイズ。発音までしてくれる。便利の一語につきます。買わない手はない。生徒も親もそう思ってしまいます。でも、私は少なくとも英語を学ぶ者が電子辞書を使うことには反対です。「なんで今更重い辞書を何冊も持ってこなきゃいけないの?」と言われそうですが、それでも反対です。
なぜか?例えば小学生が学校からお家に帰るのにあっちこっち寄り道をして帰る。友達の家や捨て猫をそっと隠しておいた橋のところなどなど(今どきはないかな?)。この寄り道こそ実は豊かな経験や後々役立つ知識の宝庫だと思います。もっとも昨今は命がけで寄り道をしなければならない物騒な世の中になり、子ども達にはいささかかわいそうですが、寄り道は本来重要な知の源でした。
調べものをするのもそうです。調べる過程で思わぬ拾いものをする。それが後々キーワードになったりしますよね。辞書をひくのもそうですね。目的の語にたどり着くのに途中一見不要な些末な語にぶつかる。しかし、これらは明らかにその後の語彙形成に重要な役割を果たします。電子辞書にはそれがない。遊びがない。寄り道がない。だから得られる知識が直截です。これでは地頭は鍛えられない。さっさと諦めてすぐに答を求める風潮と軌を一にしているような気がします。