人様の存在を忘れたとき
この4年間で20校ほどの高校で話をしてきました。学問のおもしろさを伝えるのが目的で、演題は20校すべてで「未来からの留学生諸君へ」としました。若者は未来の我が国を作る立役者です。若い時代に国作りの基礎を学び、やがて未来の我が国に帰り平和で豊かな国作りに励んでもらわなければなりません。そのために今は様々なことを貪欲に学んでほしいが、先ずは自分の興味がどこにあるかを知ることから始めよう、といくつかの代表的な分野の話をします。例えば東京のスカイツリーには五重の塔で使われている心柱の制震技術が生きているよなどです。その中から興味のある分野を見つけたら、あとはゆっくりと自分なりに眺めてほしいと思って話をします。
この講演の最後に必ず入れるフレーズがあります。それは、「どんな仕事にもその向こうには人様の存在があるよ。人様の存在を忘れたときその仕事は仕事ではなくなる。」という内容です。一見つまらなく見えるデスクワークでも、人のいやがる仕事でも、その向こうにはそれを心待ちにしている人々、頼りにしている人々がいますよね。県庁マンの仕事の向こうには住民という人様が、学校の先生には生徒という人様が、政治家には国民という人様がいます。その「人様」の方を向くことを忘れて一部の人の方や自分自身の方しか向かなくなったとき、仕事ではなくなります。若者たちにそう伝えてきました。自分にも言い聞かせていることです。